アリアケジャパンのスーパー会長はニッポンの外食の黒子

ビジネスモデル

6月5日(木)に放送されたカンブリア宮殿に招かれたのは、アリアケジャパン株式会社の会長、岡田甲子男(おかだ きねお)氏。「日本の“食”を支えてきた 知られざるトップ企業の秘密!」でした。

あるプロジェクトの関係で国内の様々な市場を調べている中に、食品加工市場がありました。リーマン・ショック後に少し持ち直したのに、東日本大震災を契機に混乱し、それが収まると食品偽装騒ぎでガタガタになる。そうした大変な逆風が相次ぐ中でも右肩上がりの業績を維持している企業、それがアリアケジャパンです。「食品業界のインテル」とも呼ばれています。

アリアケが手掛けているのは、業務用のスープのエキスやブイヨン、ラーメン店の秘伝のダシ、洋食店で使うソース、レトルト食品・カレーのルウ・離乳食などです。例えば、「即席麺」では、スープの元に入っている鶏や豚のエキスなど、いわゆる味のベースとなる調味料を作っているわけです。ファミリーレストランなど味が均一で、アルバイトでも調理が出来る様にブイヨンは工場で作られるものが使われるのですがそのエキスを作っているのもアリアケです。

食品そのものを作っている会社ではないので、一般の消費者には、ほとんど知られていませんが、畜産系調味料の専業メーカーとしては国内トップシェア。国内の食品メーカーにとっては必要不可欠で、食品業界の黒子的な企業です。

その凄さは、素材にこだわり、天然の素材しか使っていないところからまずは来ます。この売上高300億円のトップ企業を一代で作り上げたのが創業者の岡田会長、80歳。

消費者が知らないだけで、アリアケが作った味に、我々はほぼあらゆる外食の場面でお世話になっています。例えばリンガーハットの長崎ちゃんぽんのスープ、実はアリアケ製。その他にも、即席麺のスープ、カレールウ、冷凍食品に至るまで、多くの食品にアリアケの味が入っています。多くの食品に採用されている最大の理由は、もちろん、その「品質の高さ」。

飲食店・食品メーカーの担当者からは「アリアケなしでは商売できない」とまで言われる存在なのです。「依頼した以上の味を、手間暇かけずに手に入れられる」と彼らに言わしめるアリアケジャパン。

岡田会長の創業時は「3Kの極み」とも言われた、ほんの小さな『天然だし』の会社でした。しかし「即席麺ブーム」がやってきます。インスタントラーメンのスープとして採用された有明特殊水産販売には注文が殺到し、急成長を遂げます。一方、問題もありました。天然調味料という性質から原材料に個体差がありました。製造現場は「だし」を煮詰めるために想像を絶する過酷な労働環境に陥っていました。雇った新人従業員が午前中にへとへとになり、お昼を食べに行ったまま帰って来なかったというエピソードがあるそうです。

岡田氏は、この労働問題を解決することが「結果的に他を圧倒することに繋がる」と考えました。まず1978年、長崎県に小佐々工場、現在の九州第1工場を建設します。1990年には社名を「アリアケジャパン」に変更し、アメリカ、バージニア州に工場を建設し、米国市場への足がかりとしました。ここは日本国内の工場へ向けた天然調味料製造の為の材料供給を行う、フラグシップ工場となりました。

その頃、加工食品の次に着目したのは外食産業でした。外食企業にとっても、ブイヨンやフォンドボーなどのスープストックを液体エキスで代替することができれば、調理工程が簡素化でき、コスト削減にもつながる、と考えたのです。最初は相手にされませんでしたが、地道な営業活動の結果、やがてホテル・レストラン・ラーメン店など外食産業向けの売上がアリアケジャパン全体の約3割を占めるようにまで成長しました。

そして1998年、まだ売上高119億円だったのに、なんと100億円をかけてハイテク工場建設に踏み切ったのです。完成させたのは業界初となる、人の力に頼ることのない天然調味料製造の完全自動化でした。業界では、クレイジーと言われたそうです。しかし、衛生管理に関し世界で最も厳しい米国農務省(USDA)基準を自主的に採用し、無人化のおかげで最も衛生面で優れた工場であり、かつ製造原価の低減にも成功しています。とにかく凄いのです。

岡田会長は80歳に見えないどころか60代程度かと思わせるエネルギッシュな様子と、味に対する鋭敏さ。自分が旨くないと思えば絶対ヒットしないと豪語しています。この会社はどんな味のスープも完全再現できる技術力で、次々と新商品を開発します。海外出店を目論んで自分の店のスープの再現を依頼されたあるラーメン店のオーナーには「オリジナルよりうまいんじゃないか」とまで言わしめていました。

アリアケジャパンが新たな展開を見せているのが、いま話題のセブンイレブンのPB「金のビーフシチュー」です。食品業界の裏方として実績を積み重ねてきたアリアケが、ついに最終製品作りに乗り出したことを意味します。大手食品メーカーを相手に培ってきたその技術力は、消費者からどんな評価を受けるのか?興味津々ですね。

アリアケジャパンの進化はさらに続きます。長崎県の諫早で、国内最大級の広さを誇る有機栽培の玉ネギ畑の運営まで始めたのです。視察にきたサブウェイの伊藤社長は、その広大な農場を見て「最高の玉ネギ」と絶賛し、秋の新商品「オニオンスープ」の共同開発を持ちかけました。

さて、アリアケジャパンは一体どこまで進化するのか。この企業の最大のリスクは岡田会長の老化と退任、後継者問題でしょう。