まずは自転車の交通違反取り締まり徹底を

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(以下、コラム記事を転載しています) **************************************************************************** 

道路交通法が改正され、電動キックボードの規制が緩和されることが決まったが、交通違反と交通事故の急増が懸念されている。しかし本当に懸念されており解決されるべきなのは、圧倒的台数が公道に溢れながらも野放し状態にある自転車による交通違反と交通事故である。

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2022年4月に衆議院で道路交通法改正案が可決され、今までは原動機付き自転車(原付バイク)に区分されていた電動キックボードのうち、最高速度が20km/h以下など一定の基準に該当するものは、新区分である特定小型原動機付き自転車 (特定小型原付) に入ることになった。

この改正では、16歳未満の運転を禁じる一方、16歳以上であれば免許不要で運転できる。ヘルメットの着用は任意。走る場所は原則として車道だが、最高速度6km/h以下の走行モードであれば自転車通行可能な歩道なども通行できるようになる。

改正道交法のうち特定小型原付に関する部分は、2024年5月までに施行される見込みで、その頃には今回の改正に沿った機種が市場に出回ることが予想される。今回の改正による規制緩和の追い風を受け、電動キックボードが自転車のようにさらに気軽に乗れるものになると業界では期待されている。

その一方で、この改正に対しては各所から懸念も表明されている。というのも、現行の電動キックボードに関しては交通違反が既に多数報告されており、中には深刻な人身事故も起きているからだ。

大阪府では、歩道を走行して歩行者に衝突し重傷を負わせた加害者が逃走したが、過失運転致傷および道交法違反の疑いで逮捕されている。東京都では、タクシーに追突し乗客に軽傷を負わせた加害者が無免許危険運転致傷、さらに自賠責法違反と道交法違反の疑いで書類送致されている。酒気帯び運転違反も相次いでいる。

こうしたトラブルの増加を受け、警視庁は昨年12月から東京都内での取り締まりを強化しており、今年5月に電動キックボードのシェアリング事業者に対して安全対策を強化するよう要請している。警察庁もまた、悪質な違反については取り締まりを強化するよう全国の警察に指示している。

確かに今回の電動キックボードの規制緩和に関しては少々危なっかしい匂いはするが、電動キックボードだけを目の敵にして交通安全のお題目を唱えても仕方ないとも思える。というのは、同じような速度を出せる上に市場で既に圧倒的な数を占める自転車に対し、あまり有効な交通安全対策が実施されていないという現実があるからだ。

ちょっとだけ注意して都市部の車道・歩道、特に駅近くの交差点辺りを眺めてみると交通違反のオンパレードで、人身事故が起きないのが不思議なくらいの状況に溢れている。信号無視、斜め横断、右側通行、一時停止違反、携帯電話や傘を使いながらの運転などは日常茶飯事。小さな子供連れや高齢者の目の前をとんでもない速度で横切る自転車を見かけ、ヒヤッとすることも少なくない。

小生の住む町でも同様だ。自転車通行が許可されていない歩道を我が物顔で通行するばかりか、警告音を鳴らして前を行く歩行者を脇にやるママチャリの姿はごく普通。主要道路と生活道路の交差点や駅前の交差点では、車道側の信号が赤になって歩行者用信号が青になっても、そのまま横断歩道を突っ切ろうとする自転車乗りがよくいるので危なくて仕方ない。

そもそも自分たちが交通違反を犯しているという自覚すらないのが大多数だから始末に負えない。そして主に母親らしき人たちが子供の目の前でそうした交通違反を日常的に犯しているのだから、子供らが同じような行為を悪意なく繰り返すのも当然だ。

根本原因は、「自転車が軽車両であること」、すなわち歩行者の延長ではなく車両の一種だということを彼らが認識していないことにありそうだ(一体、今の学校教育には基本的な交通ルールというものは含まれていないのだろうか)。

そのため、自分の都合のよいように「車用の信号が赤でも歩行者用信号が青なら自転車もOK」「自転車は車道でも歩道でも好きなほうを走ってOK」などという勝手な解釈で、スクランブル交差点にも突っ込むし、歩道を我が物顔ですっ飛ばすのだ。

また、近頃は自転車を使ってフードデリバリーサービス業務を行う人たちが増え、配達時間に追われる彼らが半ば確信犯的に交通違反を犯しているとの指摘もある。

自覚の有無はさておき、実態として数多くの自転車ドライバーが日常的に交通違反を犯しながら事故すれすれの行為を繰り返している状態は非常に危険である。今後都市部でも高齢化がますます進むことは明白であり、そこにこうした常習的違反ドライバーが放置されていれば、当然ながら人身事故が多発するだろう。

そして往々にして、そうした安全を軽視する自転車ドライバーは保険にも入っておらず(自治体によっては義務化されているが、それでも無保険者が後を絶たない)、自分が起こした事故による被害の補償を行う資力にも乏しいケースが少なくないと考えられる。被害者も加害者も不幸になる素地が十分膨らんでいるのだ。

こうした状態を顧みると、今後は電動キックボードへの取り締まり強化だけでなく、自転車ドライバーへの交通安全教育を強化すること、保険加入を半ば強制的に推進すること、および自転車による交通違反の取り締まりを強化することのすべてを徹底すべきではないか。 要は「自転車は歩行者じゃなく車両。自転車だって道交法に違反したら切符を切られる、悪質な場合は逮捕される。人身事故を起こせば多額の賠償金を支払わねばならない」という極めて当たり前の認識を、一般の人に浸透させることが求められているのだ。電動キックボードの販促のための規制緩和より前に、こちらをきちんとしてもらいたいものだ。