ふるさと再生に懸ける

BPM

1月29日の「ガイアの夜明け」の「ふるさと再生に懸ける」を録画で観た。安倍政権は公共事業を中心とした大型補正予算案を編成した直後であるが、 この番組では中央政府のサイフに寄生する代わりに何とか自力で再生しようという地方の動きを追う。

財政破綻の一歩手前に立たされている大阪府・泉佐野市、6年前に財政破綻した北海道・夕張市をとり挙げ、その再生に取り組む挑戦に密着する。

泉佐野市は、関西空港開港という絶好の機会に、箱モノ公共投資に頼って借金を増やすだけ増やして後世の世代にツケを回してしまった、情けない地方自治体の代表である。

最近、市長に就任した千代松氏は、しがらみの無さを活かし、思い切ったリストラ策、税収増加策を主導している。まずは市長自らの報酬をカットし、職員の給与カットも要請。そして市が所有する資産のうち稼働していないものを積極的に売却し、市のキャッシュ状況を改善。市長の覚悟が伝わってくる。

市長の意を受けた担当部署が取り組むのは、新たな発想で税収以外の財源を生み出すこと。要はアイディア勝負。地元出身で別の地に住んでいる人たちのふるさと納税を促進するべく、特産品を活かした高級カニ飯をお礼の品に加えた。税額控除の関係で、ふるさと納税をした人の実質的負担は数分の一となる。

また地元の産業を活性化する動きの一つとして、それまでコストを掛けて集めて捨てていたギンナンを使った名物づくりに取り組んでいる様子が伝えられた。地元の工業高校生に殻を取除く方法を考えてもらい、それで集めたギンナンを料理に使うように薦めてきたのである。他にも同市では、市長車などに広告ステッカーを張り付けるという、いじましいくらいの積極策が紹介されていた。

一方、6年前に財政破綻した元炭鉱の街、北海道・夕張市では、バブル時代に箱モノ投資に失敗した上に、人口が急減し一層高齢化・過疎化が深刻化している。税金や公共料金の値上げはもちろん、市職員の削減により市民サービスは低下の一途を辿った。東京都職員の立場から派遣されていた経験を踏まえて、同市の財政再建に名乗りを上げた31歳の鈴木市長は、大胆な街の再編に挑んでいた。

夕張の再生を担う核はコンパクトシティ計画である。高齢が加速的に進む地域を再生・維持するためには、10年掛けて地域毎に集落を集約した上に、次の段階では地域の駅周辺に集約することを目指している。

この計画が有望なのは、市が提供する団地に移住してきた住民が互いに訪問し合い、地域コミュニティが復活しつつあることである。この試行が成功したら、いずれは日本での教訓・ノウハウを活かしてアジア新興国各地で展開できると期待できる。その前途は平坦ではないが、高齢化の最先端を行く日本、急速な高齢化を控えているアジア中進国・新興国にとっての福音になるかも知れない。

いずれもまだ目立った成果を生んでいるわけではないが、こうした試行に取り組む地域のパワーにはさらに期待したいし、できれば協力したいものである。