「D-NET」がネットワークする、災害時救命ヘリ

BPM

5月4日放送のTBS系「夢の扉+」は、「“空の救命ネットワーク”~数百機のヘリコプターを交通整理! 安全・効率的な災害救助で、一人でも多くの命を救う!」と題して、JAXA航空部 研究員/小林啓二さんをフィーチャーしました。

大災害時には、空からの人命救助がカギとなります。地上の交通網が断たれればなおのことです。しかしそれぞれ属する機関(消防、警察、自衛隊、病院)が異なるため、すべてのヘリの運行状況を一度に把握することすら困難で、ましてや一元的指揮系統がないので連携は現実には難しいと云います。

そんな問題を解決しようと、「空の救命ネットワーク」開発に取り組んでいるのが、JAXAの小林氏です。人工衛星を活用する小林氏のシステム「D-NET」をヘリに搭載すれば、要救助者の位置と各ヘリの位置など、上空から収集した様々な情報を、各機関の本部、そしてすべてのヘリ同士でリアルタイムに共有することが簡単にできるのです。空の救援活動の効率を飛躍的に向上させるものです。
http://www.jaxa.jp/press/2012/10/20121031_d-net_j.html

小林氏はもともと航空機メーカーでヘリの自動操縦を研究しており、災害時に役立つヘリの開発を提案しました。しかし上司は却下。会社員の立場では思うような研究ができなかったため、会社を退職。

小林氏の相談を快諾した大学で「航空と災害対応」について研究を重ねた末、小林氏は次に移ったJAXAで、関係省庁や病院に自ら足を運んで働きかけを続けました。しかし、消防、警察、自衛隊と、縦割りの指揮系統の垣根を取り払うことは、想像以上に困難を極めました。各省庁を回っては、「D-NET」の必要性を説く日々だったそうです。

その間、新潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震が発生。そして3.11を迎えます―。東日本大震災の発生時には、1日300機ものヘリコプターが、被災地の空を行き交ったそうです。現場は混乱を極めたそうです。『また、間に合わなかった…』。小林氏はその悔しさを原動力に、1人でも多くの命を救おうと、「D-NET」の実用化を急ぎます。

そしてこの春、一部の救急病院で運用されているドクターヘリと、全国の消防ヘリが、初めて「D-NET」でつながるようになりました。小さな、そして大きな意義を持つ一歩です。多組織を連携させるための地道な働きかけの毎日を指して、氏は自らを「JAXAで唯一の営業マン」と呼びます。この「営業活動」が将来、何百、何千の命を救うことを目指して。この構想と意思、この技術を活かすべく、是非、協力してあげて欲しいですね。