「飼い犬に手を噛まれた」?コジマ創業家

ビジネスモデル

最近の記事で、家電小売の大手・コジマがビックカメラの傘下に入るという報道があったが、経緯を聞けば聞くほど不可解である。

両社の社長が提携交渉を3年ほど続けた結果であり、両社長がにこやかに記者会見している写真が大手新聞やTVにて報道された。しかし一方で、創業家で最大株主である代表取締役の小島章利会長は取締役会の直前まで「つんぼ桟敷」に置かれたままだったという。実際、小島会長はこの資本提携に今でも反対だという。

寺崎社長は90年に鹿児島銀行からコジマに途中入社し、その後経営企画畑を歩んで順調に出世し、創業者の息子である小島章利氏の後継として2年前に社長になっている。つまり創業者である小島章利氏の父親・勝平氏に寵愛され、近年経営が不調になったコジマに対する融資を継続する条件として章利氏が社長職を譲る相手として、メイン銀行である足利銀行に多分最も信頼されたのであろう。

小島章利会長と寺崎社長の役割分担は小島会長の言によれば、前者が営業、後者が管理・M&Aだということで、越権行為ではなさそうだが、言い換えれば「商売は自分のほうが分かっている」という会長の自負が透けて見える。いずれにせよ、幾ら寺崎社長が自分の役割としてM&A交渉を進めていたとしても、もう一人の代表取締役であり会長であり、創業家であり最大株主である小島章利氏に途中報告もせずにいたことは経営者の行動として望ましいとは思えない。

取締役会で反対したのが小島会長1人だけだったということから、既に外堀は埋められていたのだろう。メインバンクもこの「身売り」に賛成していた可能性が高い。多分、途中段階での取締役会で議論しても小島会長は猛反対したろうし、それは少数派だったかも知れない。つまり結論は同じかも知れない。しかしながら、これほど重要な経営判断にはプロセスが重要だという小島氏の言い分はもっともである。

このやり方は「だまし討ち」といえ、まるで数十年前の三越・岡田会長追放クーデター事件のようである。しかしワンマンで名を馳せた岡田氏と違って小島氏は(小生も少々存じ上げているが)全くそんなことのない紳士である。もちろん経営トップとしての頑固さや創業家としての利害はあったろうが、人の意見を聞かないタイプではなかったと思える。社内でまともに戦略を議論できなかったのだろうか。残念である。

創業家から経営を委託されたはずの寺崎社長が創業家を裏切って、自らの地位保全を条件に会社を身売りした、という世間にある批判に対し、寺崎社長は何と応えるのだろう。何より、単純に「寄らば大樹の陰」的にビッグカメラのグループ入りするだけでは、家電量販というビジネスは先細りになる可能性が高い。新しいビジネスモデルを構想することこそ、経営のリーダーシップであろう。是非、寺崎社長にそのあたりを聞いてみたいものだ。