「自家培養技術」による再生医療は着実な成果を生んでいる

ビジネスモデル

8月25日放送の「夢の扉+」は「再生医療のトップランナー!皮膚もひざ軟骨もよみがえる!“自分の細胞を培養”する再生医療製品で新たな医療の道を拓く」。ドリームメーカーは愛知県蒲郡市にある再生医療製品のベンチャー・メーカー、J-TEC(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)の事業開発室長・畠(はた)賢一郎氏。

番組冒頭で紹介される手術。全身の9割以上にヤケドを負った5歳の男の子。生存率わずか3%。その命を救ったのは、男の子自身の皮膚を培養するという「再生医療」の技術。畠氏たちが作った「自家培養表皮」は、日本で初めて「再生医療製品」として国から承認を受けた。そして現在、日本で唯一、製造販売を行なう。

J-TECの畠氏のもとには、日本中から患者の細胞が送られてくる。この時点ではまだ保険適用されておらず、そのままでは患者の両親に全額請求される。そして畠氏の判断で、J-TECがその手術費用1200万円を負担した。設立以来赤字続きの会社(患者が途中で死んでしまうと費用は全額会社負担になるそうだ。そんなのアリ?)にとって小さくはない金額だ。

患者自身の細胞・組織を人工的に培養する「自家培養技術」。その実用化において、日本は世界に大きく遅れをとる。製品として承認されるまでに長い年月を要するからだ。“再生医療の技術を、健康保険適用の製品として、広く多くの患者に届けるためには、一体どうしたらいいのか―”。『誰かがやらなくては―。再生医療で一人でも多くの患者さんを救いたい』。その心意気で、畠氏は、口腔外科医の職を辞して、この会社に参画した。そして途方もない関係省庁との交渉をこなしてきたのである。難題は次から次へと降りかかる。

そんな彼らの思いが詰まった新たな製品が、今年4月、保険適用までこぎつけた。それは、ひざ痛から患者を救う「自家培養軟骨」。10年を超える“承認の壁”を乗り越えて実現した、第一症例の手術がこの5月に実施された。患者は元バレーボール選手の女性。そして傷ついたひざ軟骨は見事によみがえった。

その成果は海外の注目も浴び、番組の最後ではタイからの視察があったことも紹介された。山中教授の御膝元、日本の再生医療が世界からそうそう遅れるわけにはいかない。関係者の意地と矜持、心意気が伝わってきた。