「発送電分離」のインパクト

ビジネスモデル

昨日、経済産業省の電力システム改革専門委員会が「発送電分離」の方向性を打ち出したそうだ。朝刊に載っていたのを見て、正直驚いた。いくら電力会社嫌いの枝野さんが大臣をしているとはいえ、あの経済産業省が全電力会社の最も嫌がる「発送電分離」を打ち出すとは、と。

もちろんポジティブな驚きである。日本の高コスト体質の根っこにある、ロクでもない仕組みのひとつだからである。既得権者たる電力業界にとっては地域独占を崩されかねない、非常に危険な発想なので、これまで政治家と官僚に対する強力なロビー活動によって押さえつけてきた議論なのである。

「発送電分離」には2案が併記されており、「機能分離」と「法的分離」のいずれにするか、今後の検討により年末に決めるそうだ。

発送電分離が実現すれば、電力会社以外の発電事業者がじりじりと各地に増える可能性があり、間違いなく競争が進む。現行の「総括原価方式」も併せて止めるそうである。そうなれば電力会社の発想も切り替わり、コスト削減に努力し電気料金の水準を抑える効果も期待できる。

なにせ総括原価方式というのは、掛ったコストに決まった割合の利益を上乗せして電力料金を申請する(しかも大抵認められる)という方式なので、電力会社とするとコストを掛けたほうが儲けが増える仕組みなのである。地域独占ならではの天下の悪法である。

この「発送電分離」の推進と「総括原価方式」の取りやめは、電力業界の構造を大きく変える。昔の電電公社がNTTになった以上のインパクトがあるだろう。今後も、次の総選挙に向け、政治家への圧力や政治資金での籠絡など、骨抜きを狙った電力業界の巻き返しが激しくなるだろう。有権者やマスコミが政治家を監視する必要があるのはこれからだ。