「無印良品」らしさへのこだわりが生む年間6500万の購入者

ビジネスモデル

9月19日(木)放送のカンブリア宮殿が採り上げたのは良品計画。松井忠三(まつい・ただみつ)会長を招いての題は「『経営にまぐれなし!成果を出す仕組みのつくり方』~赤字38億円からの経営改革の全貌!~」。

「無印良品」。生活雑貨から衣料品、家具、食料品(これは知らなかった)まで、7500アイテムを販売。暮らしに関わる商品なら何でも揃うお店として、右肩上がりで成長を続け、年商1880億円。今や24の国と地域で、610店舗を展開している。

1980年創業。「わけあって、安い」をコンセプトに、西友のプライベートブランドとして誕生。90年代には“ムジラー”なる熱烈なファンを獲得していった。しかし2001年には38億円の赤字に陥り、創業初の危機に立たされた。原因はユニクロ、ニトリといった低価格店の台頭に慌てた商品戦略の混乱。そしてそれまでの成長にあぐらをかいていた企業体質にあったという。

この赤字会社の再建を託されたのが、傍流にいた現会長の松井忠三氏。彼は社内の膿を出すべく、苦渋の決断として在庫廃棄を皆の目前で行う(一種のショック療法だ)を経て、「無印らしさ」を取り戻す“仕組み”を作り上げ、みごとV字回復を成し遂げた。

38億円の赤字解消の為に松井が作り上げたのが、全13冊、2000ページにも及ぶマニュアル『ムジグラム』。そこにあった、一般的なマニュアルにはない膨大な“仕組みつくり”のノウハウとは、全ての項目に対し、「なぜ、誰が、いつ、どうやって」を必ず明記することである。ちょっと前にこのブログで採り上げたしまむらのマニュアル永遠改良主義とはまた違う、マニュアルによる理念の浸透方法と感じた。

特に「なぜ」が丁寧に書かれているのが印象的だった。一昔前であれば有無を言わさず「やれと言ったらやれ」的なものがどの日本企業にもあった。しかし今の若者にそれは通じない。代わりに、何かをする理由に納得できたら、日本の若者も海外の若者もきちんと行うことができる。番組では、『ムジグラム』で中国人スタッフを教育する無印良品の取り組みを追っていた。

次に番組が追ったのが、商品開発である。年間6500万人が購入する“無印良品”の魅力とは?シンプルなデザインと機能性に優れた商品である。環境に配慮した素材や加工方法を考案するスタッフや、お客の要望に応えて改良される商品、さらにお客のニーズを掘り起こす取り組み等々。

その典型例として番組が採り上げたのが、年間900万足のメガヒットとなった直角靴下。実はチェコで見つけてきた「おばあさんの手編み靴下」を無印良品に落とし込んだものだ。そこには、『ゼロから新しい物を生み出すのではなく、昔から長く使われてきた「良品」を見つけ出し、現代の生活に合わせ仕立て直す』という無印良品の原点ともいえる思いが込められていた。それを商品開発のスタッフが淀みなく答えることができたところに、この会社が理念を共有していることの証左を感じた。