「チャーハン専門店」のアイデンティティと地方展開

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3月22日(金)に「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で紹介されたチャーハン専門店「チャーハン王」。東京・新橋の新橋駅前にあるビルの地下、(目に付きやすいよう)わざと人気行列店の隣にオープンしたという。

主なメニューとして提供しているのはチャーハンとスープがセットになっている「チャー王セット」だけという拘りがいい。ラーメン専門店などはもうフランチャイズが幾つもあるが、チャーハンはない。だからこそ先行者利益を享受できると考える、その戦略的発想がよい。運営会社、SRDの社長・黒瀧将史氏はリヴァンプのコンサル出身だという。

黒瀧氏は(全国展開の際に使用する食材を探すため)静岡市の清水魚市場を訪れたついでに、(地方へのフランチャイズ店開拓を目指し)コメダ珈琲店のフランチャイズを展開するトークインコーポレーションの小林享嗣社長と面会する。そこでの会話は微妙。小林氏は「地方ではチャーハン一本のメニューでは無理。他のメニューも幾つか欲しい」と要請。

しかし主メニューをチャーハン・セット以外に拡げるのはかなりリスキーである。「チャーハン専門店」というアイデンティティを失わないようにしなければいけない。要請に対応するためにはチャーハンとスープの各種類を増やすことが一番だろう。さらに餃子などのサブメニューを幾つか開発することまでは大丈夫だろう。しかし天津丼や牛丼、ラーメンやカレーなどと増やしていけばいくほど、どこにでもある「大衆食堂」との違いは希薄になる。オペレーションも複雑になり、提供が遅くなり、食材の無駄が出てコストも抑えられず、魅力的な価格づけができなくなるだろう。なんといっても「地域で一番美味しいチャーハン」を謳えなくなっては元も子もない。

さて、最終的に黒瀧氏がどう考えて対応するだろうか。この「チャーハン専門店」が地方にフランチャイズ展開するのが楽しみだ。